クロスの永久保証は素晴らしいけど、油性ボールペンでは役立たない

高級ボールペンというと、その筆頭はクロスでしょう。

本当に高級かは微妙ですけど、世間のイメージはクロスです。

Google検索で発見できる記事数や、実際に当サイトの人気記事でもクロスがダントツです。

私の親父も、クロスのボールペンは何本も持っていました。ほぼ全て、職場プレゼントか記念品/景品です。

それから親父の形見が2本、義父の形見が1本あります。

その最大の特長は、機構上の故障には永年無償保証していることです。最初に耳にした時は、驚きました。

でも実はボールペンの場合、永久保証って大したこと無いのです。

今回はクロスの永久保証の素晴らしさと、実は油性ボールペンでは役に立たないということを紹介させて頂きます。

(ただし2019年10月20日時点では、“修理依頼品は原則、本体全ての製品交換とさせていただきます。”Webサイト表記あり。つまり回転機構に不具合あって修理して貰えれば、「新品交換」というボーナス特典があります)

永久保証と機構

クロス筆記具の構造上永久保証について

“クロスの筆記具は、その使用年数にかかわらず機構上(メカニズム上)の故障に対する保証が付いています。”

“この機構上永久保証は日常の状況でお使いいただく限り、生涯にわたり書く喜び(“書く”という行為)をお約束するものです。ボールペンやペンシルの芯の出し入れ、インクの貯蔵から供給まで、「滑らかに書く」という筆記具の基本機能を提供する機構部分が故障した場合、この保証に従い、無償で交換・修理いたします。”

“修理依頼品はご面倒でもお買い上げ店、または販売店へお持ちくださいますようお願い申し上げます。”

私が先日入手したクラシックセンチュリーのスターリングシルバーも、回転機構がダメになっていました。

こんな時には修理依頼品を、ヨドバシカメラなどの販売店へ持ち込めば、気軽に修理対応して貰えるということです。

最近では死蔵されるよりも中古品として流通することが多くなっているようで、なかなかクロスも大変だと思います。

それでも「機構上の永久保証」を貫いているのは、流石としか言いようがないです。

結婚式の時、「生涯変わらぬ愛を誓います」という宣言を、本当に実行しているようなものです。

これを記念品やプレゼントとしてチョイスしやすい価格で販売してくれるのだから、もはや神対応と言っても良いかもしれません。

実際、クロスと同じような「機構上の永久保証」を提供する筆記具メーカーは存在しません。

そして何より、「これから何十年も存在し続けるだろう」という盤石の安心感を与えてくれる点は、本当に大したものです。

イメージの面から「一般大衆にとっての高級ボールペン」の筆頭となるのが、良く分かります。

実は大したことない永久保証

しかし失礼なモノ言いをすると、クロスは機構的に故障する可能性があるということです。

私は数十本を超える「年季の入ったボールペン」を扱って来ました。

モンブラン、ファーバーカステル、クロス、ダンヒル、カランダッシュ …

その中で回転機構が故障したボールペンと遭遇したのは、クロスだけでした。

モンブランの場合は相当くたびれたマイスターシュテュックがありましたが、メガネのネジ止め剤で調整できました。

失礼なモノ言いになるもしれませんけど、やっぱりドイツ製やスイス製は優れています。

そうそう、「大したことない」というのは、ボールペンの話です。

さすがにメカニカルペンシル(シャープペンシル)だと、機構的に複雑です。故障する確率も高くなります。

シャーペンの場合には、クロスの「機構上の永年保証」は、まばゆく光ります。

ただし油性ボールペンの場合は、そもそも他社だと「回転機構の故障」という問題は殆ど発生しません。

そして回転機構が故障した場合、クロスやモンブラン(マイスターシュテュック)は「ユニットごと交換」が可能なのです。

なぜか接着剤で固定されているので、腕力だけは必要です。

でも逆に言うと、腕力だけあれば十分です。

ペン先のネジを少し緩めて、「ふんっ!」でペン先を押せば、回転機構は簡単に外せます。

ちなみに先程のスターリングシルバーなんかは、”魔改造” してしまったので、修理依頼品として持ち込めません。

そこでせっかくなので、死蔵していた親父のクロームの回転機構と交換してしまいました。(^^;)

不具合はメッキやヘコミ

ボールペンを長期間使用した場合、どのような損傷が発生するでしょうか。

日頃から肌身離さず持ち歩いているボールペンの場合、実は「ぶつかって」生じるダメージが多いです。

つまりメッキ部分が剥げたり、本体がへこんでしまうという具合です。

これらは、「機構上の永久保証」の対象外です。機構ではなくて、「見た目」ですから。

ちなみにクラシックセンチュリー・シリーズ、その中でも最も使い安いと人気のあるスターリングシルバーが、特に「へこみ」に弱いです。

スターリングシルバーは銀の割合が92.5%です。だから変形に弱いんです。

しかし一方で、92.5%という銀成分のおかげにより、クロームや金メッキよりも滑りません。ダントツで握りやすいです。

ここら辺のトレードオフは、本当に悩ましい話です。

それから変色という問題もあります。これは銀磨きクロスを試してみたのですが、どうしても跡が残りました。

こういった美観の問題発生を防ぐためには、丁寧に使用することが大切です。

そうすると回転機構の故障といった問題は、自然と起こりにくくなります。

だから「機構上の永年保証」というのは、あまり嬉しくないのです。

まとめ

そういう訳で、「クロスの永久保証は素晴らしいけど、油性ボールペンでは役立たない」というお話でした。

それに永く大切に使うという心構えは大切ですが、「高級ボールペンだから永く使えるだろう」というのは誤解です。

筆記具というのは、大切に扱わないと、長く使い続けることは出来ません。

私の手元にある「年季の入った筆記具」は、いずれも常用環境下において、出来るだけ大切に利用されて来た逸品ばかりです。

「クロスの永久保証というスタンスは斬新でカッコ良いけれども、あまり実用的ではない」というのが、正直な使用感です。

それでは、今日はこの辺で。

ではまた。