【万年筆】モンブランの146や149が評価するに値しない理由

実は少し事情があって、2019年の9月にペリカンのスーベレーンM405万年筆を使いました。

そうなると「”よつばせい” のことだから、万年筆にも手を出すだろう」と評価レポートを待って下さる方がいるかもしれません。

しかし残念ながら、そのようなことは無いと思います。本記事を書き直している2021年3月時点でも、その考えには変わりありません。

今回は、なぜモンブラン・マイスターシュテュックの146や149万年筆に手を出さない理由を説明します。

一言で結論を言ってしまえば、「手入れが大切な道具なのに、しっかりとしたサポートが手軽に期待できないから」です。そして「ペリカンであれば手厚いサポートは期待できるし、自分で何とかすることも出来る」からです。

(実は2021年3月時点で、1950年代のペリカン万年筆を4本、2000年代のペリカンを5本も所有する者になってしまいました。そこら辺の話は、また別な機会に)

今回はどうして頑なになるほど、モンブランに手が出ないのかを紹介させて頂くことにします。

[chat face=”mikan2.jpg” name=”Mikanお嬢様” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=”maru”]父ちゃんにしては珍しいよね[/chat]

万年筆と手入れ

万年筆は “強くない筆圧で適切に” 使い続けていれば、あまり細かい手入れは必要ありません。

私は日本製ということもありますけど、パイロットのセレモという5,000円クラスの14K万年筆を、ノー・メンテンナンスで30年以上も使い続けています。

(いや、私が使ったのは10年だけです。残り30年は母親です。今では彼女の所有物です)

万年筆というのは、ボディ(本体軸)の中をインクが流れます。そしてペン先の僅かな隙間から、毛細管現象でインクが流れ出ます。

使わないで放っておくと、インクが固まって大変なことになってしまいます。そうでなくても、理想的には、月一回程度の洗浄が望ましいのだそうです。

だからインクも重要なアイテムです。実はこれ、ブルーブラックのインクを利用して痛感しました。ペリカンのM405は2021年12月に軸内を掃除しました。そしたら1本は、砂利のように固まったブルーブラックのインクが詰まっていました。

こんな砂利みたいに固まったインクが残っている状態は、万年筆には大変に望ましくない悪影響を及ぼします。何十年も使い続けた場合、ボディを損傷させてしまう可能性もゼロではありません。

また毛細管現象をコントールする訳で、ペン先の調整も大切です。私は筆圧が弱いのでペン先を痛めないタイプですが、喜んでペン先が曲がるような筆圧を好む御方も存在します。(某 “万年筆評価の部屋” の師匠とか)

ちなみにペリカン万年筆はソケットごと交換できる構造になっているおかげで、私のような者にも軸内掃除が可能な訳です。モンブランの146や149は、そういう訳には行きません。先ほどの “万年筆評価の部屋” の “師匠” と呼ばれる方や、筆記具メーカー/ペンドクターなどに掃除/調整して頂く必要があります。

またペリカン万年筆は、交換用のペン先だけも販売されています。

そしてモンブランは新品を販売する場合、販売代理店に「加工してからの販売」を禁止事項としました。これによって業界では「知る人ぞ知る」といった名店の幾つかが、モンブラン万年筆の取り扱いを終了しました。

私もメーカーの社員なので、販売代理店によってトラブルが生じる気持ちも分かります。また売上が重要であり、コストを増やして顧客に負担をかけるのは望ましくありません。だから全販売代理店に対して一律に「販売代理店は加工禁止」とするのも、分からないでもありません。

しかし… モンブランは良質な万年筆を販売して来たけれども、「そこそこ」には満足できないのが “万年筆使い” と呼ばれる者の宿命です。「自分にとって最高」でなければ我慢できないのです。

もちろん有名デパートには、ペリカン万年筆を加工せずに顧客満足を実現する名人も存在します。だからモンブランのアプローチも、悪くはないかもしれません。

しかし… 私のように自分でペン先をラッピングフィルムで加工までやってしまう者からすると、交換用部品も提供されていないモンブランには興味を持てない訳です。

だから今後も、モンブランに手を出すことは無いかなあ… と思っている訳です。

(とはいえ義父がモンブランのファンで、146や149でなければ数本のモンブラン万年筆が手元にあります。ただし新しく入手するということは、無いだろうなあ、と)

使い始め

特に万年筆を使い始める場合は、あなたの使い方に応じた設定になっていません。

人間というのは、「無くて七癖」です。力の入れ方、動かし方、角度、使用する言語など、いろいろ考慮することが大切です。

良い万年筆は、そこそこの設定でも、そこそこの性能を出すことが出来ます。と、いうか、そういう万年筆を「良い万年筆」と言うのかもしれません。

しかし特に欧米では使用前の調整が当たり前なのか、そのままでは使えない万年筆が販売されていることも多いです。有名デパートには、お客様に合わせた調整ができるスタッフを確保しているところもあります。

私は2010年前半にペリカンのスーベレーンM405を2本ほど購入しましたが、残念ながら工場出荷時の無調整な状態なものを購入せざるを得ませんでした。そしてまさに2本目は、調整が必要となっています。

F(細目)を購入したのに、1本目として購入したEF(極細)にインクフローが及びません。だから文字も、EFよりも細くなっています。

モンブランの万年筆も同様だと聞き及んでいます。だから購入した時に調整することが必要となりますし、何かあった時に調整して貰えることが大切です。

しかし横浜でさえ30分もかかるような我が家では、そんなに気軽にモンブラン万年筆を任せられるショップを訪問することはできません。なかなか辛いところです。

モンブランの方針

海外のことは知りませんけど、日本のモンブランはブランド追求型のビジネスを強く展開するようになりました。

(一度だけなので感情論になってしまいますけど、渋谷の直営店は二度と訪問したくありません。銀座は悪くないと思いますけど…)

万年筆を使う人の間では、かつては金ペン堂とかフルハターなどが有名でした。

こういったお店が、昔はモンブランを愛し、同時に酷使する人たちを支えていたのです。

そういうお店は、先程のような販売方針の転換により、モンブランにとっては必要なくなったとのことです。

たしかにエコシステムを維持しながらブランドを高めるというのは難しいことで、それも企業戦略でしょう。

メーカーとしては販売代理店を平等に扱う必要があり、たとえ一店でも問題を起こせばブランドそのものが揺らぐことも起こる時代です。優良な数店が加工が可能な審査システムを導入するのは、メーカーの立場では大きな費用と工数を必要とします。

でもこうなってくると、一体どこでマイスターシュテュック146万年筆を購入して、どこへこれら146や149のメンテナンスをお願いすれば良いのでしょうか。

国産メーカーがメーカーを問わずに対応して下さるペン・クリニックでも、モンブランは対応不可能になっています。

かつてのモンブランは庶民のユーザも多く、私の義父などが該当します。(ただし繰り返しますけど、マイスターシュテュック146や149といった3桁台ではなく、2桁台の万年筆です)

その豊富なインクフローとM(中字)設定のモンブランでは、いずれも恐ろしくはっきりとした字を書くことが出来ます。

しかし現在では、実用使いとして万年筆を追い求めるような “変質的な” ユーザーは、モンブランにとって嬉しくないようです。

かつて横浜そごう店を訪問した際には、筆記具としての矜持を保った店員さんに感動しました。

しかし数年前に渋谷店を訪問した時は... 筆記具を扱っているお店とは思えませんでした。品揃えも、見せ方も不十分でした。

店員さんも品揃えに応じて、筆記具談義をするような雰囲気ではありませんでした。

開発/製造部隊と販売部隊は別物ですけれども、その開発/製造部隊は日本に存在しません。だからもちろん会うことは出来ません。サポートチームは日本にいるのでしょうけれども、会って気軽に話が出来るという雰囲気では無さそうです。

日本には優れた国産万年筆が存在します。もちろんモンブランも悪くありませんけれども、モンブランのブランドだけでなく、その筆記具としての実力を発揮させたいなら、都内の有名デパートのようなところへ気軽に赴ける環境が必要です。

「こら辺のお店や名人店でも扱える実用的な万年筆」は、今のモンブランの方針ではないのでしょう。

146の魅力

先程のフルハターの記事では、森山さんは40以上の万年筆を個人的にお持ちだそうです。そして5本は146とのことでした。

本体軸(ボディ)の太さが絶妙で、それで10本も入手してしまったのだそうです。

たしかにマイスターシュテュック146は、私も一度は試してみたいと思っていました。

しかし現在では先ほどのように、サポートの心配があります。

何度も繰り返しますけど、子育てその他で自由時間が皆無な者は、隣町あたりでサポートして貰えないと困ります。

おまけに別にモンブランでなくても、優れた万年筆は山ほどあります。

太軸とは言えないかもしれませんが、私にはペリカンのスーベレーンM400があります。

これでもう十分です。

実は数か月前に楽天で、質屋が何も知らずにマイスターシュテュックを5,000円程度で販売していたことがありました。

(ネームも入っており、特価に拍車がかかっていました)

それでも私はスルーして、油性ボールペンのマイスターシュテュックだけを購入したのでした。

モンブランがブランド戦略を進めるは理解できますが、もはや私にとってのモンブランとは、その程度の存在です。

ちなみに替え芯のジャイアントリフィルも高く評価していますが、最近は全く使っていません。

カランダッシュのゴリアット芯か、三菱ジェットストリーム替え芯ユーザーと化してしまいました。

まとめ(たかが筆記具)

マイスターシュテュック146や149は筆記具という道具であり、価値を発揮するには充実したサポートが必要です。

都心に住んでいなければ受けられないサポートであれば、私にとってモンブランは縁のない存在です。

横浜まで行けば伊東屋さんのお世話になることができ私でさえ、モンブランの万年筆は辛いです。

そして電車で10分乗れば、「パイロットのカスタム74試筆台(万年筆試筆台) 設置店」にも行けます。

ブランドなんぞよりも、筆記具としてパフォーマンスを発揮することがが大事でしょう。

だから私は、モンブランのマイスターシュテュック146や149に手を出すことは、決してないと言い切るのです。

(2021年時点で、ペリカンのビンテージ万年筆には手を出してしまいましたけど)

それでは、今日はこの辺で。ではまた。

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記事作成:小野谷静 (よつばせい)