1本1,000円を越える鉛筆の使われ方と伯爵コレクション

ファーバーカステルのパーフェクトペンシル伯爵コレクションでは、鉛筆をケチケチと使いたくなる。何しろペンシル(正式にはリフィルと呼ばれる)は一本当たり、新品だと2021年10月23日時点で1,000円を越えている!

それに伯爵コレクションは鉛筆削り器を内蔵しており、さらに重量33gであるためにバランスが良くない。このバランスの悪さを我慢して使うところに、”文房具の美学” が存在するらしい。

もちろん伯爵コレクション用の鉛筆は三菱ハイユニよりも一回り太い丸太軸リフィルだし、芯は有名なファーバーカルステル9000番に近い。鉛筆(リフィル)単独では、「さすがは数百年の歴史を誇るファーバーカステルだ」と感嘆させられる。

しかし伯爵コレクションの金属部分を装着した時に、重量バランスの悪さで全てが無に帰する。そのためなのか、いちびって超短くなった丸鉛筆のリフィルと伯爵コレクション組み合わせた形で、製品レビューされていることが多い。

ここら辺が “闇の文具王” としては、あまり面白くない部分だ。つまり伯爵コレクション金属部分は鉛筆キャップとして使われ、鉛筆(リフィル)は抜いたらば直ちに利用する。

鉛筆の後端を金属部に装着することはない。詰まるところ、筆記している最中は “ただの太ったオッサン… 鉛筆” なのだ。

持ち歩く時だって、伯爵コレクション+新品ペンシル(リフィル)という状態は、「ムダに長い」と言いたくなる。少なくともビジネスマンがワイシャツの胸ポケットに収納するような文房具ではない。

だからファーバーカステル伯爵コレクションは机上の装飾品と化し、鉛筆(リフィル)はチビチビと必要時だけ使うようになる。これって見た目はカッコ良いかもしれないけど、失礼ながら “金持ちの道楽” の範疇に属するのではないだろうか。もちろん人生に潤いは大切だけれども、僕は基本的にビジネスマンだ。仕事の鬼だ。

いつでもどこでも、太軸鉛筆の底力を存分に発揮させることによって、バリバリ仕事をして金儲けに勤しみたい。それを華麗に支えてくれるのが伯爵コレクションの重量33gと長年の歴史という重みだったら、もう言うことはない。

その想いを実現したのが、実は冒頭画像だったりする。目を凝らすと(凝らさなくても?)、丸太軸のパーフェクトペンシル鉛筆が伯爵コレクションを貫通していることが分かる。

これは鉛筆と鉛筆削り器がぶつからないように設置されているストッパー突起を、ダイヤモンド製ヤスリで摺り減らしたことによって実現している。もともと技術者なので30分程度で十分な量を削れるだろうと見積もったら、まさにその通りで作業完了した。

(己を信じて、ひたすら中太のヤスリで突起部分を削る単調作業を繰り返す… なかなか精神的にツラい作業だったりする)

内蔵された鉛筆削り器は、ネジ加工でキャップに装着されている。回すだけで簡単に取り外せる。おかげで僕の伯爵コレクションならば、鉛筆全体を伯爵コレクションに内蔵できる。だから新品辞典から、伯爵コレクション+丸太軸の鉛筆(リフィル)という組み合わせで使うことが出来る。先端部分はお馴染みの鉛筆キャップでカバーしてしまうのだ。

ちなみに僕の場合は消しゴム部分の金属カバーを紛失してしまった人から、伯爵コレクションを譲って頂いた。鉛筆の消しゴム部分まで金属キャップを作ってカバーする徹底度合いは伯爵コレクションらしいけれども、残念ながら実用的じゃない。

僕がやってしまった伯爵コレクションを伯爵コレクションとも思わない魔改造は、消しゴム部分の金属カバー紛失問題を解決してくれる。

「それじゃあ、せっかくの消しゴムは使わないの?」と思う人もいるかもしれない。いや、そんなことはない。

僕のパーフェクトペンシル伯爵コレクションの場合、鉛筆削りを取り外したキャップ部分まで鉛筆(リフィル)を挿入した状態なので、キャップを外すと消しゴムが顔を出す。だからシャープペンシルの付属消しゴムと同じような使い方が可能だ。

ところがこれが普通のパーフェクトペンシル伯爵コレクションだと、次のような作業になってしまう。

  • ステップ1:鉛筆を伯爵コレクション金属部から取り外す
  • ステップ2:消しゴムカバーを外す
  • ステップ3:消しゴムを使う
  • ステップ4:消しゴムカバーを装着
  • ステップ5:鉛筆を伯爵コレクション金属部に装着

… なんか異様に、作業工程が多いっスね。集中力が途切れることもあれば、時間も必要そうだ。まあ使い込んだ丸太軸鉛筆(リフィル)ならば、消しゴムも使い込んでしまっているので関係ないかもしれない。そうか、消しゴム部分が見栄え悪くなっているからこそ、金属キャップで消しゴム部分を見えないようにしているのか…

でも机上で使っているだけならば消しゴムは専用品を用意しておけば良いだろうし、やっぱり鉛筆後ろに付属している消しゴムって、非常用として使うのが良いかと思う。

そう考えると、どうしてファーバーカステルが現在のような設計にしたのかが気になって来る。たしかに鉛筆削りを内蔵するアイディアは面白いけども、削りカスを始末する必要がある。そう考えると、鉛筆削り器もまた非常用になる。

さらに太軸の “マグナム” を製品化したファーバーカステルだけれども、伯爵コレクションの太軸ボールペン版イントゥイションは、今一つな評判だった。こうやって移り変わりを見ていると、もしかすると数年後の伯爵コレクションは、再び初期版のように鉛筆削りを取り外してシンプル化しているかもしれない。

(そういや我が家のイントゥイション、最近は全く出番がないな… 太軸でもモンブランのスターウォーカーはフル稼働状態なんだけど)

ちなみに伯爵コレクションのパーフェクトペンシル・マグナムだけれども、芯が2mm –> 5mm化しているとのことだ。シャープペンシルでも1.4mm芯が最大だと記憶しているので、5mmにした理由を知りたいところだ。

(もしかして5mm化したマグナムの芯も、”デザイン” という理由?)

まあ僕は “闇の文具王” と呼ばれているが、それはあくまで実用性やコストパフォーマンスを向上させるためにメーカー期待に添えないことに由来する。こっちは好き勝手にするので、筆記具メーカーは筆記具メーカーで、好きなようにやって頂くのが良いかと思う。

余談になるが、クリップは可動式なので、スーツの胸ポケットにも装着できる。キラキラしたパーフェクトペンシル伯爵コレクションは、本当にスーツ栄えする。この点は、やっぱり大したものだと思う。

そういや日本には米国のような鉛筆専門店は存在するのだろうか。子供からは、「日本でも鉛筆館を開店してみたらどうかな?」と提案されてしまった。

いや僕の本業はITメーカーの技術者だし、しょせん文房具に関してもソロプレーヤー(一匹狼)だ。子供の君がシャープペンシルを投げ捨てて、再び鉛筆を使うようになれば考えてみないでもない。

… そもそも万年筆とボールペンだった僕が鉛筆にまで手を出し始めたのは、”小学生時代に使い残された鉛筆がモッタイナイ” という理由なのですぞ、子供よ!

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:小野谷静