重くて悪趣味で不格好で、それでも絶対に手放せないボールペン

昨年は筆記具を使う仕事が増え、トラブルに悩まされた1年でした。

数時間におよぶ筆記で、ボールペンを持つ腕の筋肉が動かなくことがありました。

初めて使った方眼ノートでは、万年筆でさえ腕の筋肉が動かなくなることがありました。

そんな私が現在頼りにしているのが、カルティエのロードスターというボールペンです。

冒頭画像の通り、悪趣味で不格好です。おまけに46gというヘビー級ボールペンです。

クロスのクラシックセンチュリー三本に相当する重さです。

しかし小さい頃から鉛筆や万年筆で鍛えられた私には、このロードスターは手放せない究極の一本なのです。

今回は何でそうなるのか、ロードスターの魅力について語らせて頂くことにします。

ロードスターの仕様

冒頭画像でも不格好に見えますが、カタログスペックを見ると感動するほどです。

  • 全長:約141mm (収納時)
  • 全長:約144mm (筆記時)
  • 胴軸径:約15mm
  • 最大径:約19mm (クリップ含む)
  • 重さ:約46g

太軸の高級ボールペンで代表的存在であるモンブランのスターウォーカー(メタル版)でさえ、下記の通りです。

  • 全長:約138mm (収納時)
  • 全長:約141mm (筆記時)
  • 胴軸径:約13mm
  • 最大径:約16mm (クリップ含む)
  • 重さ:約45g

一回り大きいので重量級といったイメージは強くないですけど、握った時の感覚は筆記具というよりも「棍棒」です。形状から分かるように、重心は後端に寄っています。

宝石付きの高級ボールペン

車のロードスターと同じように、典型的なアンダーステアです。下記の紹介記事でも書いたように、まるでカボションカットされたブルーサファイアを魅せるために考案されたようなボディ・デザインです。

https://www.note1005.com/?p=2063/

デザインもシンプルで、高級ボールペンの中でも最高峰のカルティエなのに、高級感がありません。カルティエのロードスター・ブランドの一つとして2003年頃に製品化されたとのことですが、なかなか突き抜けていると言えそうです。

知人からも不人気

このカルティエのロードスターですが、年末の忘年会で会った知人達にも不人気でした。

身長180cmクラスが2名いましたけど、彼らにしてもボールペンのバランスが後端寄りで、どうにも持ちにくいと言われました。つまり欧米規格で作られたから、国際的にはバランス良いなどとは言えないということです。

たしかに私が握っても、持った瞬間に違和感が生じます。一方でモンブランのスターウォーカーはバランスが取れており、45gという重さが気になりません。

実際に手に取った知人は、別にスターウォーカーを「重いボールペン」だとは感じなかったとのことです。

(ちなみに彼、モンブランというブランドを知りませんでした)

https://www.note1005.com/?p=2164/

どちらもインクは純正芯にしていたので、大差はなかったはずです。実際に書いてみても、圧倒的にスターウォーカーの方に軍配が上がりました。

ささやかな味方としては、子供がカボションカットされたブルーサファイヤに感心した程度でしょうか。

そういえば忘年会の知人には、重いボールペンが人気でした。クロスのアポジーは36gの大型ボールペンで、重心も後ろ寄りです。これも大層気に入ったとのことです。

ちなみにもう一人の身長180cm台の知人はSARASA CLIPを所有しており、モンブランのマイスターシュテュックが気に入ったようでした。

(ル・グランでなくて、普通サイズのクラシック)

私も年末には使い方を悩んでいたので、全く他人のことは言えないでしょう。

私だけでなく、誰から見ても「重くて悪趣味で不格好」だと言えます。他の持ち主で三菱鉛筆ジェットストリームとの組み合わせが感動的だとコメントする人がいましたけど、その人の心境が全く理解できませんでした。

(彼は純正芯だとダメで、ジェットストリームが使えたら満足だったそうです)

長所と手放せない理由

さて以上のような有様なのに、どうして私は気に入って絶対に手放せないのでしょうか。

それは次の画像が、全てを説明しています。

高級ボールペンのロードスター

お分かりいただけたでしょうか。ボールペンを持つ角度が、直角(90度)に相当近くなっています。

一般にボールペンは高級品であってもなくても、ペン先にボールが存在します。このボールを滑らかに回転させるには、直角が理想的な角度となります。

だからボールペンを持つ時の推奨角度は60度-90度なのです。上記の画像は、その理想的な角度の範囲内に収まっています。

しかし私の場合、これは珍しいことです。なぜなら鉛筆や万年筆に慣れた私は、普通に筆記具を持つと45度-50度になってしまうからです。

この私のボールペン向けでない持ち方を「矯正」してくれるのが、カルティエのロードスターなのです。ボールペンの重心が後ろ側に寄っているので、なるべくボールペンを縦方向にしないと、力を抜いて持てないのです。

逆に画像のような角度でロードスターを握ると、自然に持つことができます。おまけに重心が後ろ寄りということは、ペン先の重量は普通のボールペンと変らないということです。だからペン先を自由に動かすことが出来ます。

おまけにブルーサファイアは少し目立つかもしれませんけど、モンブランのホワイトスターのように自己主張しません。まあボールペンのお値段的には、モンブランのマイスターシュテュックやスターウォーカーと大差ないです。

つまり高級ボールペンではあるけれども、宝石付きなのに目玉が飛び出るような高価格ということはありません。私のように中古品を気にしないユーザであれば、お手頃価格で入手できます。

と、いうか、実際にはお手頃価格を通り越して、超格安値で入手できました。なにせカルティエの筆記具を知る人は多くないので、「カルティエのボールペン」という名称で販売されていましたので。

(流石にメーカー名がキャップに刻印されているので、カルティエだということは分かって販売されていました。検索すれば、すぐに分かるのですけどねえ)

それにしても本当に手放せないアイテムです。私の場合は文字を書き込む紙が多様なので、紙質にあったインクを選択する必要があります。

そんな煩わしい苦労が一切ないので、このカルティエのロードスターです。紙もインクも、殆ど気になりません。おかげで年末は連続5時間に及ぶ筆記を、難なく終えることが出来ました。

これが他のボールペンや万年筆といった筆記具だと、紙が変わるとインクを変える必要が出て来ます。もちろんボールペンならば直角近い角度にすれば良いのですけど、気付くと斜めになっています。

今回は細かい紹介はしませんが、ようやく本日になってモンブランのマイスターシュテュックで第二パターンを編み出しました。しかしこちらはZEBRAのSARASA水性インク(0.5mm)を使うことが前提となっています。

したがった現時点で「困った時に頼れる筆記具」は、まだカルティエのロードスターしか存在しないという訳です。

(スターウォーカー等も悪くないのですが、つい慌てて筆記する時には文字が乱れてしまいます)

まとめ

今回は重くて悪趣味で不格好だけれども、それでも絶対に手放せないボールペンが、カルティエのロードスターだという話でした。

自分にあった筆記具というのは、重ければ良いというものでも、高級ボールペンならば良いというのでもありません。

また私のように鉛筆や万年筆で育った者に限定される話なので、誰にでもロードスターをオススメできるという訳ではありません。

この「人それぞれ」という部分に、筆記具の奥深さがあると言えるのかもしれません。

ともかく私は究極の一本を手にして、もはやインクで苦しむ必要もなくなりました。嬉しいことです。

もちろんカルティエは単色ボールペンなので、赤用や緑用のボールペン軸も必要です。それに特定の状況が長く続く場合には、カルティエのロードスターよりも別な筆記具の方が効率良い時もあります。

ただし困った時には、ともかくカルティエのロードスターを使えば良いという道が拓けたのは、本当に嬉しいことです。

もともと私は筆記具マニアではありませんし、他のやるべきことに重点を移すことが出来そうです。

ありがたいことです。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:四葉静