【ネタバレ】「真夏の方程式」(東野圭吾)は、成長した子供に読ませたい傑作

さてガリレオ湯川の「沈黙のパレード」を読んだので、前作である小説「真夏の方程式」にも目を通してみました。

まだ我が家のMikanお嬢様も登場人物の恭平君と同じく、全てを理解して受け止めることは出来ないです。と、いうか、事件の概要を推理することも出来ません。

しかし物理学者というよりはエンジニアともいえる湯川学先生が、人々が少しでも幸せになれるようにと打つ手の数々には何となく感動したようです。

まだ読んだことのない方には、推理物と言うよりも小説として読むことを、是非オススメしたい一冊です。また私にしても、殺人事件ではないけれども日常生活で遭遇する物事は似たような事柄であり、ぜひ湯川先生のように皆から感謝されるような存在になりたいと思った次第です。

以下、だらだらと粗筋(あらすじ)と、いつのように小道具(文房具)について語らせて頂くことにします。

あらすじ

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(「BOOK」データベースより)
夏休みを伯母一家が経営する旅館で過ごすことになった少年・恭平。仕事で訪れた湯川も、その宿に滞在することを決めた。翌朝、もう一人の宿泊客が変死体で見つかった。その男は定年退職した元警視庁の刑事だという。彼はなぜ、この美しい海を誇る町にやって来たのか…。これは事故か、殺人か。湯川が気づいてしまった真相とは―。
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推理小説だから殺人事件になってしまうのは仕方ないことだけれども、人の生死に関わる話です。そして生死の鍵を握ったのは、小学生の子供です。

誰がどうして何をして、結果として何が起こったのかということを明らかにした時、その事件は登場人物たちにとって重要な意味を持つことになります。

これは日頃の生活でも同じです。「謎解きはディナーのあとで」の影山執事のようにドS執事と呼ばれる私(ヒツジ執事)でさえ、物理現象や人間関係を紐解いて、感動させられることがあります。

それを分かりやすく紹介してくれるのが「真夏の方手式」です。これが大人になったMikanお嬢様に再読して頂けると嬉しいと感じる理由です。

ここら辺に関してはハッキリ言って、私が説明しても皆さんに理解していただくことは難しいでしょう。いきなり丸投げで申し訳ないけれども、ともかく読んでみることを強くオススメする次第です。

文庫本代も勿体なければ、今なら図書館で簡単に借用することが出来ます。(ちなみに「沈黙のパレード」は現在222人待ちであり、図書館で読むことは難しいかと思います)

ところで細かい点を指摘させて頂くと、ほぼ全ての学者というのは超多忙です。時間は無理やり確保しているのです。

だから恭平君とペットボトルロケットを作ることは知的好奇心や親切心で大いにあり得ると思いますが、電車の中で雑誌を読むことはないかと思います。少なくとも私の知っている大学教授は、全員が電車の中でも仕事や研究に追われています。

(同窓会の開催発起人となっている方もいらっしゃいますけど)

それにしても湯川先生、相変わらずお見事です。

自分が善人であるか悪人であるかは、彼の関心範囲ではありません。彼が関りを持つことになった恭平少年のことだけをひたすら考えます。

事件の真相など、彼にとっては些末なことです。「皆が笑顔で生活を続けることが出来ること」に、彼の関心は集約されます。

そのために必要だったら、真相を究明するのです。極めて理にかなっています。

ここまで来ると、感動ものです。

ここら辺は、「容疑者Xの献身」の頃とは、完全に一線を画しているような気がします。

「起こってしまったことは仕方ないよ」と達観しています。

さっさとこの境地に達していれば、「容疑者Xの献身」も違った結末になっていたかもしれません。残念です。

そして筆記具

TVドラマだと、手近にあるものに適当な道具で数式を書き込むイメージのあった湯川先生ですが、彼だって筆記具は持ち歩いています。

電車の中で恭平君と会話した後、彼はボールペンで雑誌の余白に電話番号と住所、そして緑岩荘という宿名をメモしています。

いかにも手近なところに書くのは湯川先生らしいですが、そろそろスマホや手帳が欲しいところです。

そういえば私は、今ではモレスキンのノートを「魔法のノート」として持ち歩いています。湯川先生にしても、「沈黙のパレード」では手帳を持っていました。居酒屋で聞いた話を、メモ取っていたそうですから。

これは湯川先生ではなくて東野圭吾氏と話すことかもしれませんが、お互いに立場や考え方が歳相応に変化したようです。だからこそ、湯川先生は手帳を持ち歩くことになったのでしょう。

ただし「真夏の方程式」時点でも、筆記具は大切な存在だったようです。私も会社で仕事をしている時には、ともかくYシャツの胸ポケットにボールペンを常備して、緊急時以外は使わないようにしています。

だから湯川先生と同じファーバーカステル伯爵コレクションのアネロ(エボニー軸)というボールペンは、いつも机上に無造作に置かれています。いつでもすぐにメモを取れるようにという配慮からです。

ところで今回改めてドラマに目を通して、湯川先生の筆記具が変わっていることに気付きました。

油性ボールペンである点も、パーカー互換芯である点も変わりません。しかし本体軸が、ファーバーカステルの伯爵コレクションから、ダンヒルのサイドカーに変わっています。

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ちなみにこれ、サイズは手頃なのですが金属軸です。重さは30gを越えます。

今では長時間の激務だとスターウォーカーに耐えられなくなった私には、使いこなせないボールペンです。残念ながら中古品で手頃なものが販売されているのですが、手を出すことはないでしょう。

まとめ

と、いう感じで、細かい点では気になるところもあるし、共感するところもあります。

こういったところを掘り下げていける内容の濃さも、この本にはあります。そもそも今回の事件も、起こしたくて起こしている訳ではありません。

やむをえずに一流の人が手を出すから、事件は複雑さと深みを帯びて行く訳です。私がドSなのも実は親切心から生じているとか、人間という存在の価値を問うようなお話です。(キッパリ!)

と、いう次第で、まだ読んだことのない方には御一読をオススメする次第です。