[湘南日記] 再生されたクロスのクラシックセンチュリーと純正芯

クラシックセンチュリーのローラーボール

「父ちゃん、早く人気作家になってよー」という子供の願いもむなしく、ボールペン廃人の道を突き進んでいる父ちゃん。今日はクロスのクラシックセンチュリーと純正芯を再生したという日記である。

「ボールペンで再生?」と思う方もいるかもしれない。
特に今回は回転機構などは装備されていないキャップ式ボールペンである。
一体なにをどうしたというのだろうか?
(先にネタバレしておくと、単なる中古ボールペンの再生です。はい)

ポーラス芯の再生

クロスの純正芯は庶民にとっては高価だ。
何度でも繰り返すが、我が親父は僕にボールペンを譲る時に、「いいか、クロスの替芯を使えるけれども、替芯はないからな!」と三度も繰り返した。
三顧の礼ではなくて、三度の念押しである。
もちろん僕は互換芯として、三菱鉛筆ジェットストリーム替芯を装着してしまった。
(キャップ式ではなくて捻ってペン先を繰り出す油性ボールペンは特に厄介なのだ)

クロスATX油性ボールペンに、互換性のない三菱ジェットストリーム替え芯

さて今回のクラシックセンチュリー12金モデルは、古(いにしえ)の時代に製作されたボールペンなのかもしれない。
もちろん口金部分の形状から分かるように、これは廃盤モデルである。
現在のクラシックセンチュリーは、センチュリー2のように “なだらかな三角錐の口金” へデザイン変更されている。
ポーラス芯も、型番が刻印されていない旧タイプだった。
と、いうか、なんと緑青が付着している。
今までUSED品… 中古品には慣れて来たつもりだったが、これは初めての体験だった。
(たしかに銅を含む合金だけれども、一体どんな事情で緑青が発生したんだ?)

クロスの旧ポーラス芯

おまけに現在のポーラス芯のように、ペン先がフェルト・チップ(Felt-tip)になっていない。ポーラスというのはporousという英語綴りで、”多孔質の/コンクリートの” といった意味だ。
まさにフェルトペンの誕生前に考案されたポーラスを採用しているらしい。
さすがにペン先の太さは替芯(リフィル)に刻印があり、Fine (細字) とのことだった。

しかしいつまでも呆然としている訳にはいかない。
タキシード仮面山本様も、「泣いているだけでは何も解決しないぞ、セーラームーン!」とおっしゃっていた。
ここは手順通りに、ポーラス芯の後端プラスチックを外し… いや、ニッパでは取り外せなかったので、プラスチックに錐(きり)で穴を開けて引き抜いた。
ここまで勝手が違うと、謎の古代遺跡に挑戦するインディー・ジョーンズのように… ありゃ、あまりに固いので錐まで折れ曲がってしまった!
トホホホホ。

ただしプラスチックさえ取り外せれば、コチラのものだ。
インキを含んだ中綿(インキを含ませた貯蔵体)には、まだインクが残っていた。それを一旦は取り外して、まずは水道水で金属筒を水洗いする。
メラニンスポンジのおかげで緑青も取り除くことが出来た。
勢い良く空気穴から水道水が飛び出すようになった。
中綿から想像していたように、ブルーのインクだった。

で、ここで少し悩んだけれども、今回はブルーであることを尊重して、ペリカンの4001という万年筆インクを補充してみた。
中綿は乾燥しきってはいないけれども、たしかに前の持ち主が “インク切れ” というだけのことはある。
なんと1cc近くも万年筆インクを吸い込み… あ、しまった。

書斎とは名ばかりの小さな机で作業していたので、いつの間にか作業スペースから移動してしまっていた。
そしてペン先の小さな空気穴から、インクが盛大に漏れ出していた。
ここら辺のいい加減さは、いかにも自分らしい。

ただし日頃の行いに助けられたのか、インクが漏れたのはキーボードのスペースキーだけだった。
おそらくは一瞬だけ漏れ出したのだろう。
初めてのことで慎重に万年筆インクを注入したのだけれども、それが幸いしたらしい。
(キーボードの中に入ってしまったら、一発アウトになるところだった。おまけに多用するスペースキーだし、すぐにインク跡は消え去ってくれるだろう)

ちなみにペリカン4001というのはペリカン定番の青インクで、顔料インクでなくて染料インクだ。だから万年筆インクでは悪名高いブルーブラックのように、乾燥した時に結晶化するようなことはない。
本当は化学反応によるトラブルを防ぐためにはクロス純正の万年筆インクの方が若干マシだとは思うけれども、それでも “若干” に過ぎないのでペリカン万年筆で行くことにした。

あとはポーラス芯のペン先にティッシュを当て、山勘で余分なインクを除去する。
ペン先にティッシュを当てただけで、恐ろしい勢いでインクが流れ出て来た。
まるでインク補充した後の万年筆のペン先みたいな印象であり、顕微鏡で見たら穴だらけなんじゃないかという気がした。

もしもキャップを装着することを忘れて、万一ペン先を出したままYシャツの胸ポケットに収納したら… おそらく数秒でYシャツはダメになってしまうことだろう。

ボールペン本体軸の再生

さてモッタイナイお化けが怖いのでポーラス芯を再生してしまったけれども、それだけで全てが終わる訳ではない。
何しろボールペン本体軸に何やら刻印されているけれども、”’80” という文字を読み取れる。
1980年代のボールペンなのか、それとも80歳記念ボールペンなのか… いずれにせよ年代物であり、本体内にも緑青が付着していた。
(と、いうよりも、本体内の緑青がポーラス替芯にも付着したと考えるのが妥当なのかもしれない)

センチュリー2と違ってクラシックセンチュリーは、廃盤モデルでも現行モデルでも三菱鉛筆ジェットストリーム替芯のプラスチック版を装着可能だ。
しかしギリギリまで削ることによって装着しているので、変な汚れなどが付着していたら、障害物となりかねない。
クラシックセンチュリーのボールペン本体軸内も水道水で洗浄し、ティッシュで慎重に汚れを取り去った。
そのおかげなのか、プラスチック製のジェットストリーム替芯はアッサリと装着できた。

セレクチップのクラシックセンチュリーで三菱鉛筆ジェットストリームを互換芯にする方法

ちょっと気に入らなかったのは、口金部分がクロームメッキだったことだ。
本来のクロスならば金メッキだろうけれども、さすがにローエンド(再開)モデルのクラシックセンチュリーまではクロス魂を徹底する気はなかったらしい。これは少しだけ残念だった。
ちなみに “少しだけ” というのはクロームメッキであれば、別に12金モデル以外の口金を流用できるからだ。
ローエンドのクラシックセンチュリーだといっても、外観はセンチュリー2やタウンゼントに全く見劣りしない。
出来るだけ長く使い続けたいという時に、補修パーツが豊富に存在するというのは嬉しいことだ。
もちろん金属みがき布を使って、ピカピカ度をアップさせることも忘れない。

再生したポーラス芯

こうしてようやく廃盤クラシックセンチュリーのセレクチップモデルを再生する作業は完了し、無事に試し書き段階まで到達することが出来た。
なお結果は予想通りというか、まるで万年筆のEF(極細)ペン先で書いたようなインク濃さとなっている。
万年筆通だと、この色合いでペリカン4001インクだと見破ってしまうかもしれない。
付箋紙を何十枚も並べて分析作業をやるにも、少しばかり視認性に欠ける。

ただしプラス思考で考えると、モレスキンノートだと裏抜けすることがない。
万年筆ユーザはモレスキンノートを敬遠するが、この点は優位点となる。モレスキンノートだと三菱鉛筆ジェットストリームが人気だけれども、新たな筆記具が加わったとも言えそうだ。

まとめ

以上の通りで、クロスの廃盤クラシックセンチュリー12金セレクチップボールペンとポーラス芯の再生は無事完了した。

(ペリカン万年筆インク4001(ロイヤルブルー)は上品だけれども薄いので、この点は改良したいところだけれども)

それにしても12金モデルとは、我ながら親父趣味である。実年齢がバレバレだ。
なんとなく本当に1980年代モデルであるような気がする。
下記のペリーローダンSFシリーズ第675巻は2022年10月25日発行だけれども、本国ドイツでは1980年代に執筆されたものだ。
(女の子の右側に描かれている男性が父親ペリーローダン。左側は豹頭王グイン… ではない)

“ストーカーがソト=ディグ・イアンを倒し、古郷銀河に平安が訪れたことをグッキーから知らされたローダンたちは安堵した。残すは “不吉な前兆のカゲロウ” の問題だけだ。四星系植民国家タルカニウムが保有するパラ露がカゲロウに反応し、その影響で監視役をとつとめるエスパーたちがつぎつぎに無残な死を遂げていたのだ! ローダンは永遠の戦士イジャルコルを仲介役に、ナックとカルタン人を引き合わせようとするが…”

さて分析業務用の付箋紙も筆記具も準備が終わったし、今年は頑張って仕事や創作活動に専念することにしたい。本日は12月28日で、残り3日と数時間だけれども。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:小野谷静